数か月前に当店で修理をご依頼くださった方から再度修理の依頼がきました。
エンジンがかからなくなったとの事。
えーと、記憶が正しければ以前もエンジンがかからないってことでエンジンオイルやら交換しつつ
燃焼室の掃除もしたんだったかな…。
オイル交換のラベルを見たら交換日が11月と書いてあったんで、修理させていただいたのは二か月前のこと
みたいです。
正確にどんな修理をしたかきちんと確認しようと当店の整備記録を調べると、データが残っていた。
11月に燃焼室を掃除しバッテリーとエンジンオイルを換えてさらにその10日後くらいに
タイヤとブレーキも交換しているとの記録が出てきました。
タイヤとブレーキは今回のエンジン不動とは因果関係は一切ないんだけど、トータルでそこそこの修理代を
払っていただいているという事は把握。
そして二か月の間に約1000㎞ほど走っておられる。
さらに問診したところ日々使用する道には坂道があるとのこと。
そこで再び燃焼室の清掃を行いエンジン始動を試みたところ、エンジンかかりました☆
まあまあご費用かけてしまった後なのでエンジンかかってよかった…。
ただ、始動性がよくない感じなので何かしら問題があるようなそんな気はします。
使えるところまで使って、どうしようもなくなったらそのとき考えてもらう感じがいいのかなあ。
わかっていることをそのままオーナー様にご説明し納得いただいた上でお返ししました。
それにしてもこの年式前後のToday系エンジンには参る。
当店でも同タイプの原付を販売したことがありますし所有されておられるオーナー様の方々にはアレな話と
思うのですが、このDioそしてToday(フューエルインジェクションになってすぐのもの)はエンジンが
かからない症状が起きやすいモデルです。
でもって特に冬起きやすいんですよねえ。
なんで冬が起きやすいかってぇと…
冬は外気温が低いのでエンジンも冷え切っている。つまり始動しにくい環境です。
それをリカバーするためインジェクションは夏場より多くガソリンを噴射するよう動作します。※
燃料が沢山噴射されることで始動性は上がりますが、寒さでエンジンはなかなか温もりにくい。
濃い濃いガソリンが噴射されているのに、もしも温まりきる前にエンジンを止めてしまう、つまり
暖気なしの短距離使用 などを繰り返すと不完全燃焼によるすす汚れが中に溜まり続けます。
燃焼室というのは名前の通りガソリンを燃やしているのですが、そこにすす汚れが溜まると
圧縮の邪魔をしたりでうまく燃料を燃やすことができなくなり、エンストする。
この状態は通称カーボン噛みと言っています。
※ 冬にガソリンを濃く噴射したりというのはインジェクションならバイクどころか車も同じような
動作をしています、つまり特段おかしいことではありません。
しかしどうやらインジェクション導入初期のDioやTodayはこのあたりのバランスがいまいち良くないみたいで
不完全燃焼が起きやすいと思われます。
しかし前回そこそこしっかり燃焼室を清掃して返して2か月しか経過していない上1000㎞とそこそこの距離を
走っているのにまたカーボン噛みを起こすってのはエンジンかけて止めてをしょっちゅうしている※2 もしくは
いつも使う道に急な坂道がある※3 のかもしれません。
※2 一度に乗る距離が短い、例えば家から駅までの1㎞弱を毎日往復というような使用法はエンジンが
温まりきる前にエンジンオフするため不完全燃焼を起こしやすくなります。
また、信号待ち毎エンジンとめるアイドリングストップも同じくエンジンが不完全燃焼を起こしやすく
不調の原因となりますので控えてください。
車両に元々アイドリングストップ機能がついているものもありますがこれも同様の理由にて使用されない
ほうが良いと思われます。
※3 原付にはエンジンに負荷をかけすぎないようなどの理由でリミッターがかかるようになっていますが
このときプラグの点火数をわざと減らすよう動作しています。
なので速度の頭打ちがきた時点でさらに速度を上げようとフルスロットルしても速度は伸びません。
がしかし、スロットルを回すことで点火は少ないがガソリンは噴射され続ける…つまりチョーク引きっぱで
走ってカブってもたーみたいな状態になります。
急な坂道ではこの頭打ちがスロットル開度およそ2/3あたりで起きたりしますが、速度の頭打ちを感じた
ところでさらにスロットルを開けないようにして頂くとカブってもたーを防止できるそうです。
これら↑の話は以前にも何度か書いているので知っているという方もいるかもしれませんが
カーボン噛みが多発する車種であるTodayそしてDioは約5年前くらいまで製造していましたので
現在もお乗りになっている方はいらっしゃるでしょう。また、ほかの車種でも10年~5年前くらいに製造された
インジェクション車は冬にカーボン噛みの症状が起きやすい傾向にあります。
今回の話を知らなかったという方は参考にしていただければと思います。