POWER STATION STAFFのつれづれ日記

2006年2月にOPENした高槻市別所交差点にあるオートバイショップの修理レポ・日常あれこれ・看板猫のことなど他愛もない話。

DLCも考えもの

 先日入庫したZX-10Rですが、車検とフロントフォークのオーバーホールをご依頼頂いてます。
 オーバーホールに係わる部品とフォークオイルの入荷待ちだったのですが、これらが全て揃ったのでいざオーバーホールを実施しております。
 
イメージ 1
 
 
 オーバーホールをご依頼頂いた時にオーナー様から聞いた話によると過去に他のショップでフォークオーバーホール後、ほどなくして乗らなくなってしまったとのこと。なんと勿体なーい(>へ<)
 
 実際に分解してみると、スラッジがほとんど無い透明度の高いフォークオイルが出てきました。
 
イメージ 2
 
 フォークが摺動すると中に入っている部品たちから金属粉(スラッジ)が出てくるので、ある程度動いたフォークのオイルはねずみ色になっているのが普通です。
 しかしこんだけオイルそのままの色で出てくるのはご申告通りオーバーホール後殆ど動かしていなかったのでしょう。
 
 ただ中のオイルがいい状態でも、オイル漏れが起きてしまっていてはオイルシールの打ち換え、つまりオーバーホールが必須です。
 
 先日にもちょろっと書きましたが倒立タイプのフォークはオイルシールの位置的に漏れが始まると重力に従って下へ下へと漏れが出てくるし、シール付近にあるブレーキローターにオイルがかかると制動力が低下し最悪ブレーキが効かないなんてことになり得ます。
 
 また倒立フォークに使用されるフォークオイルは正立フォークより粘りが少ない為さらっとしていますので
漏れ出したらじゃばーっと漏れる(我ながら説明が稚拙)んでブレーキどころかタイヤにかかってしまう
可能性も否めません。
 
 それに本来入っているべきオイルが漏れるという事はサスペンションとしての性能が損なわれるという
ことですし…。
 
 とにかくフォークは漏れたらオーバーホールせんならんってことですね!
 
 
 整備中の10Rに話を戻します。
 オイルを抜き取った後中に入っているパーツそしてインナーチューブなどを洗浄していきます。
 そしてチューブに新しいオイルシールを打ち換えし、あとは新しいフォークオイルを中に注いでから全て組みなおせばOK!
 
 のはずが…パーツ洗浄をしているときに見つけてしまった。
 インナーチューブに小さな傷があるのを~~~><;;;;
 
 飛び石だろうか?写真では分かりにくいくらい小さな点が二つ。
 爪先でなぞると若干の引っ掛かりを感じる。
 
イメージ 3
 
 この小さな傷がシールを損傷して漏れが起きてしまったのかなあ…(;_;)
 
 この10Rのインナーチューブは純正ながらDLC加工してあるため写真のように黒光りしています。
 そのせいでっていうたらアレですが漏れたフォークオイルが汚れを巻き込んで表面を覆っていた為傷が隠れてたんですよね。オーバーホールの際洗浄してたら傷が見えてきたっていう感じ。
 傷が小さいので仕方ないのかもだけど、分解前には傷があるってわからなかった…><;
 
 これが片側だけならよかった??んだけど…もう一本のインナーにも傷があることが判明して驚愕。。
 
イメージ 4
 
 何に驚愕ったら、傷が飛び石でつくような点傷やシールに異物が噛みこんでできる縦にまっすぐの傷、そのどちらでもないギザギザの傷だということ。
 傷がついていた場所は停車時は外に出ていないけど、フォークを引っ張ったら出てくる位置です。
 
イメージ 5
 
 指さしてるあたりがギザギザ傷がある部分。
 車体に組みつけてる際サスは写真よりも沈み、指さしている部分あたりにオイルシールが来る感じです。
 
 うーん。
 
 ちょっとここで作業ストップ!
 
 
 インナーに傷が見つかった場合は傷の深さにもよるけど修正できそうなときは修正して組みなおしています。
 インナーチューブは高いから!そうおいそれと交換ってできないの^v^;
 修正をする際は、傷のある部分とその周りを優しく細目のサンドペーパーで均し段付きを取ってから仕上げにメタルコンパウンドっていう金属専用のコンパウンドで磨き上げます。
 
 
 が。
 
 今回この修正という手が使えないんです残念ながら。
 理由は、インナーがDLC加工されているから。だから作業を止めざるを得なかった。
 (のでうんじゃかんじゃうんちく垂れるために作業を止めたわけではない決して汗)
 
 DLCというのはご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ダイヤモンドライクカーボンの略。
 この加工技術は
 
 ① 耐摩耗性に優れ
 ② 摺動性に優れ(摩擦抵抗が低い)
 ③ 摺動時相手材を摩耗させにくく
 ④ 摩擦時に化学反応が起こりにくく
 ⑤ 耐食性が高い(腐食しにくい)
 
 …という、がばい特性があります。
 どれも本当素晴らしいですよね、金属表面の、ひいては機械の寿命を飛躍的に伸ばしてくれるわけで。
 私のゼファーのインナーにも施したい♪なーんて^^人
 
 しかし、よいことだらけに見えるDLC加工も今回のような事例ではデメリットが見えてきます…。
 堅く強いDLCコート、しかしその表面が一か所でも破れてしまうと破れたところから
コーティング層は破損していってしまうんです。
 
 なので今回のように傷が発生したらDLCの層をブラストなどの加工で一度剥いで傷のケアをした後
WPC加工し、再度DLC加工を施すという事が必要です。
 
 これがまた安くない。分解&組付けの工賃がかかるのもさることながら加工代がががg
 左右で行っていたらノーマルのサスまで届くしさらにもうちょっとお金足せば某有名サス、〇ーリンズなどの倒立とか買えるっていう域です。
 加工中サスを外しっぱにして待っておかないといけないというのもきつい。
 
 ならなんとか手直しでいくか?ってぇとDLCは強度が高い為手作業で綺麗に取り去るのが厳しい。
 中途半端に層が残った所とはく離したところ、その段差部分はシールへの攻撃性十分だったりする。なんせ残ったかけらのような部分であったとしてもダイヤモンドのように固いDLCなのですから。
 
 DLCは本当素晴らしい技術ではありますがこんなマイナスの側面もあるんだと再確認><
 
 とりあえず現状をオーナー様に連絡しないと。
 状態が状態なので正直お伝えするのが気ぃ重!
 ですがこのまま黙って進めるわけにいかないですからね。
 
 あうあーなんかもやりとするうう。
 私気持ち移入しすぎてるので店長に連絡してもらおう…(。。;